~医療の知恵~「医師から『腫瘍』と説明を受けた、それって『癌』なのですか?」

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まずは「腫瘍」の定義ですが、まわりに遠慮することなく自分勝手に大きくなる病変のことです。傷を治そうとする、生きるために必要な仕組みが暴走したもので、それが止めどなく大きくなったり、転移(元の病変から離れた所に病変を作る)をしたりするのが「悪性腫瘍」で「癌」とも呼びます。それに対して、何も治療しなくても、それ以上は大きくならない病変を「良性腫瘍」と呼んでいます。

では、それらはどうやって区別するのでしょうか。患者さんに説明をする医師が自分で調べた様に話していると思いますが、良性と悪性を区別する必要がある様な病変は、実際には我々病理医が顕微鏡で見て判断しています。また、悪性腫瘍であれば、どの位のスピードで大きくなるか、転移しそうかなどを予想しています。腫瘍が大きくなろうとする「動き」を「形」で判断することは、見た目で初対面の人の人柄を判断するのと同じですし、将来の動きを予想することは、占いの様に思われるかも知れませんが、現時点で一番確実な診断方法とされています。

逆に、自分の意思に関わらず大きくなる病変は「腫瘍」だけではありません。結核の様な細菌でもかたまりを作りますし、関節リウマチでも骨や皮膚が腫れることがあります。これらを腫瘍として治療をしても、治らないばかりか悪化する可能性もあります。これらの区別にも病理診断が必要になる場合があります。

では、病理医はどうやって「形」で区別しているのでしょうか。それには経験的に、「こういう形だと良性」、「この臓器のこの様な形の腫瘍は悪性で増殖速度が速い」などと、すべての臓器の病変の過去の情報を積み重ねて判断するしかありません。

また、胃癌や胃の腺癌、胃の悪性リンパ腫、あるいは胃の肉腫と聞いて、少し混乱されている方もいらっしゃるのではないでしょうか。これは次回のお話しとさせて頂きます。

我々病理医は主治医の許可が出れば、患者さんの病変を顕微鏡を使って説明することもしています。

病理診断科 藤原 恵,坂谷暁夫