~医療の知恵~ 胃がん・大腸がんに対する薬物療法

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我々消化器外科医は、胃がん・大腸がんなどの消化器がんの治療を担当していますが、主な治療方法として、手術と薬物療法があります。手術に関しては、最近腹腔鏡手術などの低侵襲な手術方法が普及し、アプローチの仕方が大分変わりましたが、実際お腹の中でやっていることは100年前の手術と変わっていません。一方、抗がん剤などの薬物療法はここ10数年の間で劇的に変化し、進歩が著しいです。

薬物療法は、主に手術で完治が見込めない胃がん・大腸がんの進行を遅らせる目的で使用するのですが、最近、新規抗がん剤が次々に開発されています。大腸がんに関していえば、以前は抗がん剤を使用しても平均1年程度しか生存できなかったのが、今では平均2年半まで生存できるようになっています。

薬物療法の中心は、がん細胞を殺す抗がん剤ですが、分子標的薬が出現して、薬物療法が劇的に変わりました。分子標的薬はがん細胞を殺すのではなく、がん細胞が増えようとして自らが出している信号をブロックする薬です。そして、抗がん剤と分子標的薬を組み合わせて使用することで、効果が飛躍的に上昇するのです。最近は、当初手術で切除できなかった大腸がんが、この抗がん剤と分子標的薬の薬物療法により縮小し、手術で切除できるようになった症例もでてきています(これをConversion Therapyと呼んでいます)。

そして、つい最近、ノーベル賞でも話題になった免疫療法が薬物療法のひとつとして保険診療できるようになりました。通常、免疫細胞(T細胞)には、がん細胞などの体内の異物を攻撃して排除する免疫反応の働きがあります。しかし、がん細胞は自らが生き残るために、T細胞の免疫を抑制する部分(免疫チェックポイント)に働きかけて、T細胞の働きを抑制しているのです。今回話題になった免疫チェックポイント阻害剤は、その免疫チェックポイントに蓋をして、がん細胞がT細胞に働きかけるのをブロックするのです。そして、T細胞の活性化を維持してがん細胞を排除するようにしているのです。

このように、胃がん・大腸がんの薬物療法は今ホットな領域です。近い将来、薬物療法で胃がん・大腸がんが完治できるようになる時代がやってくるかもしれません。

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                         外科化学療法室長 山口 将平