~医療の知恵~「アトピー性皮膚炎~経皮感作とプロアクティブ療法~」

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アトピー性皮膚炎の発症や悪化の原因として、皮膚の乾燥・バリア機能低下とアレルギーがあります。
即ち、皮膚が乾燥してかさかさになり、バリア機能が低下したところにいろいろなアレルギーによって湿疹を生じ、かゆみが強くなることでより強く掻いて湿疹が悪化します(乾燥するだけでもかゆみが生じますので、アレルギーが強くない方でも掻きむしって湿疹が悪化することも多いです)。

皮膚の乾燥やバリア機能低下の原因の一つとして、皮膚表面の角層の主要な構成成分で皮膚のバリア機能に大きな役割を果たしているフィラグリンという蛋白の発現減少が考えられています。
そして、フィラグリン発現減少の原因の一つに遺伝的要因があります。
つまり、アトピー性皮膚炎の一部の患者さんは生まれつき乾燥しやすい皮膚であり、不適切な入浴や洗い方によっても皮膚の乾燥が悪化しているものと思われます。

では、なぜアレルギーになるのでしょうか?
乳児期にアトピー性皮膚炎になった患者さんは、成長するに伴い、しばしば食物アレルギーや気管支喘息、アレルギー性鼻炎も発症します。
このように次々にアレルギーが発症することをアレルギーマーチといいます。
以前は、食物アレルギーや喘息のアレルギー症状は、胎児期の胎盤を介したものや、腸管や気道の粘膜を介したアレルギーの発症と考えられていました。
そのため、妊娠・授乳中の母親の食事制限が指導されることもありました。
その後、母親の食事制限は無意味であることが分かり、近年では、アトピー性皮膚炎だけでなく食物アレルギーや喘息についても、皮膚を介した環境中の抗原(食物や花粉等)による経皮感作が重要であると考えられるようになってきました。
つまり、湿疹を生じた皮膚に食物が付着するなどして食物アレルギーを発症している可能性が考えられています。
このような考えに基づき、乳児期に積極的に治療することで、アトピー性皮膚炎やアレルギーマーチの発症を予防できる可能性が示唆されています。
国立育成医療研究センターでは、アトピー性皮膚炎の親か兄弟がいる新生児を2つのグループに分け、一方は毎日入浴後全身に保湿剤を塗り、一方は乾燥部位のみワセリンを塗り、生後32週まで観察したところ、毎日全身に保湿剤を塗ったグループの方が約3割アトピー性皮膚炎の発症が少なかったと報告しています。
また、より早い時期に治療開始した乳児アトピー性皮膚炎やプロアクティブ療法を行った乳児アトピー性皮膚炎患者はその後の食物アレルギーが軽減したとも報告しています。

~プロアクティブ療法について~
従来のアトピー性皮膚炎の外用治療は、湿疹が良くなるまでステロイド外用剤を塗り、良くなった後は保湿剤を塗って湿疹ができないよう維持し、湿疹が再発したら再度ステロイド外用剤を塗るという治療です。
この治療でうまくいく患者さんもいますが、保湿剤に変えるとすぐに湿疹が再発、悪化する患者さんも少なくありません。このようなときに、湿疹が治った後に保湿剤外用を継続しつつ、湿疹の再発予防のために一週間に数回、正常にみえる全身皮膚にステロイド外用剤またはプロトピック軟膏(免疫抑制剤)を塗ります。このような外用治療をプロアクティブ療法といいます。
乳幼児のアトピー性皮膚炎では経皮感作の考えから、プロアクティブ療法で正常皮膚を維持することが重要と思われます。
また、出産予定のアトピー性皮膚炎の患者さんには、出産後の乳児の洗い方指導と入浴後の保湿剤外用を説明しています。
成人のアトピー性皮膚炎でもプロアクティブ療法に変更後、正常皮膚の維持ができる様になった方が多数いらっしゃいますが、乳幼児にくらべると成功率は高くないようです。
私の力不足もあり、様々な治療法でも良い状態を維持することが難しいアトピー性皮膚炎患者さんがいらっしゃることも確かです。
今後、新しいアトピー性皮膚炎治療薬が幾つか出る予定です。少しでも症状改善できるよう、ともにがんばっていきたいと思っています。

プロアクティブ療法 図1※図1 プロアクティブ療法
九州大学医学部皮膚科教室ホームページから転記

皮膚科部長 増野 年彦