日本赤十字社 広島赤十字・原爆病院

乳腺外科

診療科・部門について

乳腺外科

乳腺外科のご紹介

乳腺外科における特色・専門医療

【対象となる疾病】

乳がん、乳腺症、乳腺炎など。

【特色・専門医療】

現在日本では、およそ9人に1人が乳がんといわれています。女性のがんでは罹患者数は第1位、死亡数では第5位です。1年間に約1.4万人の方が乳がんで亡くなられています。
一方、乳がんは早期に発見できれば治癒するものも多く、当院でも早く乳がんを見つけて患者さんを救うべく努力しております。今では乳がん治療は生物学的因子(ホルモン受容体やHER2受容体の有無など)に基づいて治療を行います。乳がん治療は日進月歩の世界であり、新しい薬が次々と出てきております。当科では、チーム医療を大切に、患者さん一人ひとりに合わせた治療を行っております。

乳腺診療チーム

乳腺診療チームの治療方針

当院の乳腺診療チームの治療方針は、まず、乳がんに対し、迅速かつ正確な診断を行い、それを患者さんにインフォームドコンセントすることで治療方針を決定します。治療は、確実かつ最良の手術を行い、チーム医療のもとで、ホルモン療法、抗がん剤、放射線療法等の最適な治療を組み合わせて行っていきます。

  1. 迅速かつ正確な診断

乳がんの診療において、まず、大切なことは、正確な診断を行うことです。現在、乳がんの多くは、触診、マンモグラフィー、超音波検査の3つの検査でほとんどの診断が可能です。実際の診断の手順としては、下図となります。

マンモグラフィーと超音波検査で、乳がんが疑われた場合には、次に、細い注射針を用いて腫瘍を穿刺し、 細胞を吸引して調べる穿刺吸引細胞診や、それよりも太い針を用いて腫瘍組織の一部を取り出す針生検を行います。乳房に針を刺されると聞くと、とても痛い検査のように思われますが、採血と同じくらいの痛みで、数分で終了しますので、通常は超音波検査に引き続き行われます。
また、超音波検査で発見できない石灰化病変に対してはステレオガイド下マンモトーム生検を行っております。具体的には、局所麻酔を行った後にマンモグラフィーにて石灰化の部位を同定し、その部位までマンモトーム針を誘導し、吸引しながら石灰化を採取し、病理検査で診断します。

  1. インフォームドコンセント

乳がんの治療には手術、抗がん剤、ホルモン療法、放射線療法などが行われていますが、実際に治療を受けるとなればやはり心配となります。多くの患者さんにとって、これまで乳がんのことなど考えたこともなく、まさか自分がなるとは思っていなかった方がほとんどです。とくに乳房の手術となれば術後の乳房の変形など外見上の変化を心配されるのも当然です。これらをふまえ、私たちは患者さんの心配や不安を和らげ、納得し、安心して治療を受けていただけるよう「インフォームドコンセント(説明と合意、理解と選択)」という概念のもと、患者さんに病気についてありのままにお伝えすることにしております。患者さんに病状につき十分理解していただいた後に、手術、抗がん剤などの治療方針などについても十分に話し合い、私たちの乳腺診療チームのスタッフと患者さん自身で治療方針を決定できるような環境作りを目指しています。

  1. 確実な手術
乳がんの手術

現在、乳がんの手術は乳房全部を切除する乳房全切除か、乳房の一部を切除する乳房温存術(乳房部分切除)が行われます。もちろん、切除範囲が少しであれば乳房の形はきれいに保たれますが、がんを確実に取り除くという観点から、乳房全摘が必要となることがあります。このような場合、乳房再建を提案するようにしております。また、乳がんが大きく、温存術が難しい場合でも、手術前に抗がん剤を行い、乳がんをを小さくしてから乳房温存術を行うこともあります。

センチネルリンパ節生検

以前は、乳がんの手術の際は、腋の下のリンパ節を切除することが一般的でしたが、腕がむくんだり(リンパ浮腫)、腋の下の突っ張りやしびれが生じることがありました。現在では、乳房からのリンパの流れが最初に到達するセンチネルリンパ節だけ摘出し、手術中に転移があるかどうか術中病理診断で検討し、転移がない場合には腋窩のリンパ節を切除しない方法をとっています。当科では、RIと色素の両方を用いて、ほぼ100%のセンチネルリンパ節の同定率です。

RI法で認められたセンチネルリンパ節
<RI法で認められたセンチネルリンパ節>
  1. 薬物治療

乳がんは患者さんごとに一人ひとりその性質が異なります。生物学的因子(エストロゲン受容体、HER2受容体など)に基づいて治療を行います。
一般的には手術の後に再発リスクを下げるために行います。そのリスクもがんのステージや生物学的因子により異なるので、患者さんごとに治療内容は異なります。
また、乳がんのサイズや性質により手術前に薬物治療(主に抗がん剤)を行うこともあります。(術前治療)
再発治療に関しても薬物により病勢をコントロールしながら、かつ、副作用も可能な限り少なくなるようにし、「QOL(生活の質)を維持しながら長く続けられる治療」を目指しています。
抗がん剤やホルモン療法以外に、第4のがん治療法といわれる免疫チェックポイント阻害剤も、適応のある方には積極的に使用しております。

  1. チーム医療

乳がんの治療には、手術、抗がん剤、ホルモン療法、放射線療法などがあります。これらの治療のうち、どれが最もよいのかではなく、これらの治療の最良も効果をうまく組み合わせて治療を行っていくことが大切です。また、よりよい治療法を選択するためには、専門的な画像診断や病理検査が必要です。さらに治療期間は長期にわたりますので、治療に伴う副作用や社会生活の問題のサポートが必要となります。
当院では、単に疾患を治すのみではなく乳がんの患者さんをまるごと診る「全人的医療」をモットーに、「チーム医療」を行っております。チーム医療の中心は常に患者さんであり、患者さんを囲む医療者として、当院には専門医の資格を持った乳腺外科医、放射線科医、病理医、がん看護認定看護師、薬剤師、放射線技師、臨床検査技師、さらに社会生活の問題のサポートに携わるソーシャルワーカーがいます。患者さんのよきパートナーとして満足度の高い医療を受けていただくために、このような専門家集団が連携して「乳がん診療チーム」を形成し、乳がん治療を行っています。

患者さんを中心としたチーム医療
<患者さんを中心としたチーム医療>
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