診療の対象となる主な疾病
慢性白血病、急性白血病、骨髄異形成症候群、悪性リンパ腫、骨髄腫、再生不良性貧血などを中心とした血液全般を診療の対象としています。
当診療科における特色・専門医療
白血病
骨髄検査の分類や細胞表面マーカーの結果を迅速に出すことにより、診断から治療方針の決定までを短期間でおこないます。また、治療方針、治療成績、副作用の説明をおこない、入院が必要な症例については即日入院をおこなえる体制となっています。
単独の施設としては日本でもっとも多い症例数を担当しており、24年間の治療成績を基本にして独自の治療を展開しています。
骨髄性白血病
急性前骨髄球性白血病(M3)を除く骨髄性白血病(以下、AMLと言います)の初回寛解率は、69歳未満は90%、70~94歳は79%、全体で87%となっており、抗白血病剤の強力化、対象症例の高齢化で心配される化学療法に伴う死亡率は4%と決して高くありません。寛解導入療法に成功しますと、独自の治療として維持強化療法を11ヶ月間おこないます。これにより、5年間の無病生存率は59%で、比較的予後の良いとされるAMLのM3では完全寛解率97%で5年間無病生存率は94%となっています。
骨髄異形成症候群
人口の高齢化に伴って骨髄異形成症候群(以下、MDSと言います)が急増しています。MDS関連症例には高齢のため輸血等で経過を見ていく症例と、脱メチル化療法で、質の良い延命をはかる方法、治癒を目指してAML同様の治療を実施する症例があり、病型・病状を見ながら患者さんおよびご家族の方と治療法を決定しています。要治療例の初回寛解導入療法は、完全寛解65%、部分寛解22%、早期死亡(化学療法に伴う死亡例)6%、化学療法不応例7%となっています。
維持強化療法は、AMLと同様に11ヶ月おこないます。完全寛解例無病生存率は33%とあまり良くはありませんが、世界的なデータと比較すれば抜群に良いと言えます。特に、染色体の中間良好群の成績は56%となっており、今後に大きな改善が期待されます。
慢性骨髄性白血病
グリベックの登場で、大きな変化が見られています。ほとんどの場合、投与量を調整しながらグリベックを服用してもらい、5ヵ月後には97%のケースで原因となる染色体異常が正常化します。
その他、種々の白血病の病型がありますが、創意工夫をしながら治療を行っています。
悪性リンパ腫
悪性リンパ腫は、過去15年間に1,100例以上の治療をおこなっています。最近は、年間100~150例のリンパ腫およびリンパ腫関連の新患者があります。低悪性度悪性リンパ腫は約80%、中悪性度リンパ腫は約60%、高悪性度リンパ腫は約40%の長期生存があります。特に最近B細胞性リンパ腫については、リツキサンを併用することにより、さらに効果的な治療をおこなっています。悪性リンパ腫は時に診断が難しい場合がありますが、当院の検査部や病理診断科との協力体制により迅速で高い診断精度を維持しています。
多発性骨髄腫
多発性骨髄腫は、過去15年間に約300例の治療実績があり、最近は年間30~50例の骨髄腫および骨髄腫関連の新患者があります。また、悪性リンパ腫、多発性骨髄腫の患者さんで適応がある場合自家造血幹細胞移植を積極的におこなっています。通院治療を中心に行っており、70歳以上の高齢者においても5年間無病生存率50%となっています。
造血幹細胞移植
当院では、自家末梢血幹細胞移植30~40症例/年、同種造血幹細胞移植30~60症例/年 を施行している国内でも有数の造血幹細胞移植施設です。骨髄バンク及びさい帯血バンクの認定施設でもあります。同種造血幹細胞移植としては、HLA一致血縁者間、HLA一致非血縁者間、臍帯血及びHLA不一致(ハプロ)血縁者間移植というように様々な移植を、患者さんの状況に対応して行っています。当院で行う移植の患者さんの多くは、当院で抗癌剤治療を受けられた方ですが、他院から移植適応患者さんの受入れも多く、造血幹細胞移植が必要な患者さんに移植療法を提供できるように心がけて行っております。当院血液内科スタッフと、検査部及び輸血部のスタッフ、認定造血細胞移植コーディネーター、移植後長期フォローアップ看護師、血液・腫瘍センター外来看護師及び病棟看護師というチームにて、移植適応患者さんの移植前から移植後長期に至るまでのフォローアップ体制を作っています。
当科の方針
ほとんどの治療が長期にわたり、患者さんおよびご家族にとっては精神的に大きな負担がかかります。その負担を軽減すべく、患者さんおよびご家族に対して積極的な接触を試み、懇切丁寧に治療内容などについて説明しています。また、血液疾患の治療には他の診療科からの協力が必要不可欠であり、各専門のスタッフと連携を取りながら効果的な治療を提供しています。