2025.07.03
医療の知恵
みなさん、「奈良宣言」はご存じでしょうか?
これは、日本肝臓学会が2023年6月に奈良で発表した提言で、「肝臓の病気を早く見つけて、しっかり治そう」という社会全体への呼びかけです。
健康診断などでよく行われる血液検査の中に「ALT(エーエルティー)」という項目があります。ALTは肝臓の元気さを示す数値で、これが30以上だった場合、肝臓に何らかの異常がある可能性があります。
実は、ALTが30を超える人は、健康な人でも10人に1~2人ほどいると言われています。肝臓の病気は、初期にはほとんど症状が出ないため、数値の異常に気づかず放置してしまうことも少なくありません。
最近では、ウイルス性肝炎(B型やC型)だけでなく、食べすぎや運動不足、肥満、糖尿病などが原因で起こる脂肪肝も増えています。脂肪肝も、放っておくと肝硬変や肝臓がんになることがあります。
この「奈良宣言」では、ALTの数値が高かったら、まずはかかりつけ医に相談し、必要があれば消化器内科へつないでもらうことが大切だとしています。
当院でも、かかりつけ医から紹介された患者さんに対して、血液検査や腹部エコー(超音波検査)、肝炎ウイルスの検査などを行い、消化器内科の肝臓専門の医師が診療にあたります。
肝臓は「沈黙の臓器」とも呼ばれ、具合が悪くなっても気づきにくい臓器です。だからこそ、数値のちょっとした変化に気をつけることが、健康を守る第一歩になります。
もっと知りたい方は、日本肝臓学会の「奈良宣言」特設ページをご覧ください。患者さんやご家族向けのわかりやすい資料や動画もあります。
▶日本肝臓学会「奈良宣言」特設サイトはこちら
第二消化器内科 部長 辻 恵二
