日本赤十字社 広島赤十字・原爆病院

病院公式ブログ

2026.02.20

医療の知恵

舌苔にご注意を 感染予防の第一歩

皆さんは、舌の表面に白っぽい苔のようなものがついているのを見たことはありませんか。これを「舌苔(ぜったい)」と呼びます。舌苔の正体は、細菌や食べかすなどの汚れが舌の表面にたまってできた膜状のかたまりで、多くの細菌が集合して作られています。日常的によく見られるものですが、放置すると感染リスクが高まることが分かっています。
 舌苔ができる主な原因は、舌が十分に動いていないことです。食事中にあまり咀嚼しない、柔らかい物が多く舌を使わない、あるいは絶食が続くと舌の清掃作用が低下します。また、唾液の分泌量が減ると汚れが流れにくくなるため舌苔がつきやすくなります。口呼吸による乾燥、糖尿病やシェーグレン症候群など全身疾患も関係します。さらに、経管栄養で口から食べていない方や、高齢者で会話が少なく舌を動かす機会が減っている場合にも舌苔は増えやすくなります。
写真1は下顎骨骨折のため一時的に固形物を食べられなかった患者さんで、綺麗であった舌が術後わずか2日で舌苔を生じました。写真2はセルフケアを指導して改善した状態です。
 舌苔を放置すると、舌苔内の細菌が感染を促進する酵素を産生し、ウイルス感染や誤嚥性肺炎を起こしやすくなることが知られています。また、舌の表面が覆われることで味が感じにくくなり、食欲が低下してさらに舌苔が増えるという悪循環に陥ることもあります。
 対策としては、舌苔を物理的に取り除くことが効果的です。舌ブラシや歯ブラシを使い、舌の奥から手前に向かって優しくなでるように清掃します。ただし、力を入れすぎると舌の表面を傷つけ、逆に舌苔がつきやすい状態になってしまうため注意が必要です。
 日頃から歯みがきの際に舌の状態を見る習慣をつけ、自立している方はセルフケア、介護が必要な高齢者には介護者が舌の状態に気を配ることが大切です。舌苔ケアは感染予防の第一歩です。毎日の小さな習慣で、口腔と全身の健康を守りましょう。

                                       歯科口腔外科 部長 藤田 善教

写真1(左側:一時的に固形物を食べられなかった状態)       写真2(右側:セルフケア後)             
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