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2019.10.29

医療の知恵

前立腺について

泌尿器科が診る臓器の一つに「前立腺」があります。前立線は男性だけにある栗の実サイズの臓器で、膀胱のすぐ下にあり、尿道を取り囲んでいます。生殖器としての働きがあり、前立腺液を分泌することにより、精子を保護し運動を活発にします。また平滑筋からできており、射精時に収縮して精液を射出します。

今回は、前立腺の疾患の中でもメインとなる、前立腺肥大症と前立腺癌を取り上げます。尚、前立腺肥大症と前立腺癌は時に合併することもありますが、肥大症が進行して癌になるわけでなく全く別の疾患です。

前立腺肥大症

前立腺は一般に加齢とともに大きくなることが報告されており、前立腺肥大は生理的な加齢現象とも言えますが、前立腺が肥大することにより何らかの排尿症状があれば「前立腺肥大症」と言います。症状は、尿が出にくくなる排尿症状、尿が我慢出来なくなったり、頻尿となる蓄尿症状、排尿後の残尿感などの排尿後症状があります。排尿は誰にでも毎日ある現象のため、日常生活にも影響を与える病気です。原因としては、男性ホルモンが重要と言われていますが、糖尿病や高血圧、肥満といったメタボリック症候群にも関係していると言われています。前立腺肥大は放置して治るものでなく、一般に進行性疾患とされ、悪化すると尿閉(尿が出なくなる)や、尿路感染症、膀胱結石などの合併症を起こすことがあります。そのため、排尿症状があれば、一度は泌尿器科を受診することを勧めます。治療としては、生活指導、内服治療、手術療法などありますが、それぞれに注意点があるので、医師の説明を聞いて、納得のある治療を受けましょう。

前立腺癌

前立腺癌の罹患率は、日本の男性癌の中で胃癌に次いで多いとされており、2020年以降は一番目の罹患率になると予想されています。原因としては、日本人の高齢化や食生活の欧米化、またPSA検査の普及などが言われています。症状は、早期では特有の症状はなく、進行すると、排尿障害や排尿時痛、血尿などが見られることがあり、骨転移を起こせば骨痛が現れることもあります。診断は、スクリーニングとしてPSA検査があります。PSAは前立腺癌の腫瘍マーカーで、血液検査で分かるため、50歳以上の男性であれば一度は健康診断などで検査することを勧めます。PSAが高値であれば、MRIや触診などを行い、確定診断は針生検で行います。癌が確定されれば、画像検査で癌の進行度を確認します(病期診断)。前立腺癌の治療としては、手術療法、放射線療法、内分泌療法など、様々な治療法があり、これらを単独や組み合わせで行いますが、癌の進行度や悪性度、また患者さんの年齢や全身状態によって、適切な治療を選択することになります。前立腺癌は、予後が悪いものもありますが、一般には全ての癌の中で最も予後が良く、また80歳以上では半数以上に潜在性の前立腺癌があるとの報告もあり、治療が不要な癌もあるとされるため、治療を受ける際には、インターネットなどの情報に惑わされず、十分に医師と相談して決めることが大事です。

泌尿器科 副部長 平田晃

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