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病院公式ブログ

2023.06.26

医療の知恵

COVID-19時代のマスク着用について

2023年5月8日より新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の感染法上の位置付けは、5類感染症に移行しました。厚生労働省はマスクの着用に関して「個人の主体的な選択を尊重し、個人の判断が基本」との考え方を示しています。それでは、その判断をするために必要な知識をおさらいしてみましょう。
COVID-19に対するマスクの効果は科学的に検証されています。マスクは飛沫の拡散を防ぎ(NEJM 382: 2061-2063, 2020)、ハムスターのゲージ間へマスクを介在させることによりゲージ間の感染拡大を防いだ実験結果もあります(CID 71: 2139-2149, 2020)。実際に人との距離、マスク、目の防御が人から人への感染を予防することが示され(Lancet 395: 1973-87, 2020)、マスクの義務化が感染者数を大幅に減少し(PNAS 117 : 14857-14863, 2020)、マスク解除が学校でのCOVID-19感染者数を増加させることが報告されています( NEJM 387: 1953-1946, 2022)。
このようにマスクの感染予防効果は科学的に証明され、超一流の医学雑誌に掲載されています。
マスクの素材についても検証されています。マスクなしに比べて飛沫数をN95マスクは99.9%、サージカルマスクは99%、布マスクは70-90%減少させますが、フリース素材、バンダナは無効であることが示されており(Sci Adv 6: eabd3083, 2020)、適切な素材のマスクを使用することが重要です。
デメリットに関しては血中酸素飽和度の低下や心拍数・血圧の上昇などを挙げている論文もあり(Front Public Health 11: 1125150, 2023)、厚生労働省のマスク着用の考え方は妥当と思われます。
ただし、免疫や肺機能が低下しているなど重症化のリスクがある人、医療施設・高齢者施設などの感染予防が必要な場所、感染が蔓延している時には適切なマスクの着用が重要と考えます。                                           

呼吸器内科部長 山﨑正弘

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