日本赤十字社 広島赤十字・原爆病院

病院公式ブログ

2019.08.28

医療の知恵

足は全身動脈硬化の鏡

下肢閉塞性動脈硬化症という病気をご存じでしょうか?

動脈は、本来心臓が強い力で押し出した血液を流すため弾力性と柔軟性を持ち合わせています。この動脈の層が厚くなったり硬くなったりして弾力性や柔軟性を失った状態を動脈硬化と言います。紅白演歌歌手の村田英雄さん、タレントのカルーセル麻紀さんなどが罹った病気です。実はこの病気、70代の7%、80歳以上に至っては20%以上に存在するごく一般的にある病気なのです。症状はほとんどの方が無症状ですが、前は歩けたいつもの道が休みながらじゃないと足が痛んで歩けない(間欠性は行)、じっとしていても足が痛い(安静時疼痛)、足の水虫が治らない(足趾潰瘍)、褥瘡から壊死になった(足部壊死)など様々です。発見が遅れると大きな手術を要することがありますが、早期に見つかったとしてもたちまち手術とはなりません。検査は両腕と両足首に血圧計を巻き測定する上腕足首血圧比(Ankle-Brachial Index)が主流で、無侵襲検査にて行うことができます。

動脈硬化症は全身に生じます。下肢の評価目的に紹介いただいた患者さんが、実は頸動脈が極めて細く、冠動脈に治療を要する病変があるということもしばしばです。患者さんの約半数が、動脈硬化の類縁疾患である頸動脈狭窄や虚血性心疾患などの病気を合併することがわかっています。早期診断と適正治療を行うことで、自分の足で歩き、自立した人生をより長く続けることができます。健康でも50歳以上の方や、糖尿病の方、喫煙歴がある方などは1度かかりつけの先生に相談することをお勧めします。

血管外科室長 大峰高広

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