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2022.10.07

医療の知恵

医療の知恵~HBOC 遺伝性乳がん卵巣がん症候群

HBOCは、Hereditary Breast and/or Ovarian Cancer Syndromeの略称で、日本語では「遺伝性乳がん・卵巣がん症候群」と呼ばれます。HBOCにはBRCA1遺伝子、BRCA2遺伝子の2個の遺伝子が関係しています。この2個の遺伝子は男女関係なく誰でも持っている遺伝子ですが、生まれつきこの遺伝子のどちらかに病的変異があると、乳癌や卵巣がん、すい臓がん、前立腺がんなどになりやすいことが分かっています。血液検査でBRCA1遺伝子あるいはBRCA2遺伝子に病的変異が見つかった場合に、HBOCと診断されます。

一般に、日本では女性が生涯のうちに乳がんを発症するリスクは9%、卵巣がんは1%と言われています。現在までの数多くの検討により、BRCA1遺伝子またはBRCA2遺伝子に病的変異がある女性の生涯発症リスクは、乳がん41~90%、卵巣がん8~62%と明らかに高くなることが分かっています。そのため、HBOCと診断された方には一般的ながんとは異なる医学的管理(健診・手術)が推奨されています。たとえば、乳房温存療法が可能であってもあえて乳房切除が選択肢として提示される場合があります。さまざまな状況に配慮したうえでリスク低減のための卵巣・卵管切除や予防的乳房切除を選択肢として検討することもあります。

また、これらの手術や遺伝子検査は、一定の条件を満たせば保険診療で行うことができるようになりました。HBOCと診断された場合にどのような医療が行われるのか、どのような選択肢があるかについて、遺伝カウンセリングなどで詳しい話を聞くことができます。また、提示された選択肢のどれを選ぶかは、十分な説明を受けてから自由な意思で決めることができます。

当院ではHBOCに関する遺伝カウンセリングを遺伝診療部で行っており、十分に時間をかけ、病気に対する不安や遺伝の問題に対してお話を伺います。不安や興味がある方は遠慮なくご連絡ください。

遺伝診療部長 三春 範夫

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